クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

『ゼロからトースターを作ってみた結果』

 『ゼロからトースターを作ってみた結果』を読んだ。本当にゼロからトースターを作ろうとした人のドキュメンタリー。
 ゼロからというのはゼロから。鉱石を集め、精錬して、金属に変える。石油からプラスチックを作ろうとする。つまり原材料からトースターは作れるのかという疑問に立ち向かう。
 詳細にはおおよそ3つのルールを設ける。
 1つ目は店で売っているようなトースターを目指すこと。
 2つ目は地球から掘り出された状態の原料を使うこと。
 3つ目は産業革命以前からある技術を使うこと。
 これらを条件に鉄や銅、プラスチックを手に入れる旅に出る。はたしてトースターを作ることができるのか。
 たった500円程度のトースターを作るためにどれほどの技術が詰まっているのか、またどれほどの費用が隠されているのかがわかる。それはつまり日常目にしているものにもありえないほどの技術と費用がかかっていることが隠されていることも示している。
 科学技術が高まって常日頃使用するものにどのような技術が使われているのか分からなくなって久しく、また分からないまま使っていることが色々なところで言われている現代だけれども、この本はそれを実践的に感じさせる。トースター一個も作ることがこれほど難しい世界に生きている。
 自分1人では生きていくことが難しい世界だということを突きつけられているような気がした。とても面白い内容だった。
 序盤の鉄を手に入れるためにまず採掘場に行って、そのあと自分で精錬するところの展開が試行錯誤の連続でとても良いので、そこだけでも読んでほしい。
 世界の見え方が変わる本だと思う。