クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

ゆで卵

 コンビニで売っている味付きゆで卵のことを食べる直前まで美味しい味がついているとは信用していない。信用できるのか?
 あの殻が信用できない。防壁に等しく見えてしまう。
 実際にはゆで卵の殻には無数の穴が空いていて、食塩水に浸けて浸透圧でしみるという。ではここまではよしとしよう。だがそれが適切な美味しさだという保証はどこにあるのか。
 大量に作られたゆで卵の一つくらいは茹ですぎだったり茹でが甘かったり、味の浸透がうまくいっていないものもあるんじゃないのか。
 まさか企業努力を重ねに重ねて適切な茹で時間を保ち、適切な味が浸透する液体に平等に浸しているわけではあるまいて。
 と、ついつい疑ってしまう。
 それでも毎回美味しいので口に入れたあとにはもうどうでもよくなっている。
 コンビニのゆで卵は時々食べたくなるものベストテンに入るものだと思う。あとのナインは知らない。おでんとかかも。こういう5本の指に入るとか、トップレベルとか、言葉にした時他の同類をあまり思い浮かべていないように思う。1位が決まっていれば思い浮かぶ程度だ。
 人生で死ぬまでにやりたい10のコトというのもうまく埋められない。やりたいことは無数にあるけれど比べる対象が大きすぎるのも問題だと思う。
 それはさておき
 家ゆで卵もコンビニゆで卵に負けず劣らず好きなものだ。固さを決められるのが良い。個人的に半熟が好きなので9分くらい。
 半熟の問題は剥く時にある。
 半熟ということは中が固まっておらず、外も柔らかめということである。それは白身と殻がうまく分離できていないとそれはもうぐっずぐずのでろんでろんになってしまう。
 だから卵を沸騰したお湯に放り込んで9分後、すぐに水で冷やす必要がある。
 冷やしている間どうやって時間を使えば良いのかわからない。僕は時々卵を握ってみてほんのり温かいのを感じては、熱がこもっている人間ってこういうことなのかなと考えたりしている。外側から急激に冷やしてもなかなか内側にまでは伝わらないということを実感できる。サウナ行く人がよく説明している「ととのう」を卵で実感していると言っても良い。過言だが。
 その後ようやく殻を剥く。殻を剥くのはいつまでも下手くそだ。最初にヒビを入れすぎているのか、かけらが細かすぎる。細々したかけらをちびちび取っていく作業になる。しかしここで焦って大きなかけらを狙おうとすると、白身と剥がれきっていないものや殻を取ろうとする力が卵に食い込んでしまう。ちびちび取るのが正解なのかもしれない。
 そうしてようやく一つのゆで卵が手に入る。
 まあこんな面倒に考えなくてもゆで卵はたいてい美味しいので、ぜひ塩でいってください。