クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

短歌 2023年2月

鬼だって弱点がある好きだったあの人にさえ欠点はない
 
映画ならここでシーンが終わるけどコーヒーは冷め夜は覚めない
 
あの人は干物に水をかける人海に囚われ陸地を泳ぐ
 
空を飛ぶ海を泳ぐもできないで霊長と呼ぶ小さきケモノ
 
モノノケに道を塞がれ休みます炬燵避難所には一人です
 
マフラーが揺れるの見ればわかるのに風の強さを伝えたくなる
 
特急が飛ばしてしまう駅達に名前と人があり月が指す
 
片足が痺れるほどの時間だけください二度と会えないのなら
 
イヤホンが遮る内に声にする届いてしまえどうせ呪いだ
 
じゃんけんぽんチ・ヨ・コ・レ・エ・トで駆け上がる夕暮れを見る春の真ん中
 
美味いもん作るあなたの歌声とサンドイッチに卵もつけて
 
空腹を感じるけれど満たされぬゾンビ私の目を見て言って

短歌 2023年1月

まだ見ない星を目指して跳躍すホップステップ月へ銀河へ
 
放課後は西日が作る鍵盤を鳴らして歩く 運命だった
 
うさぎにもさよならと言う優しさを持つ君でさえ黙ったままで
 
暗闇に右手差し出し「踊ろうよ」照明もない独り霧雨
 
宇宙さえ広がり続けて離れるし君が私を迎えに来てよ
 
自転車を漕いだ時間が音になり耳を千切ろうと来る妖怪
 
流れ星燃えず地上に降りたとて僕は願いを叶えはしない
 
コーヒーを飲み干すまでの間さえ仮面をつけて罪を償う
 
原付で去る君を目で追いかけた遠ざかるエンジンと「また明日」
 
堕ちたとて天使は天使羽があり眠る貴方は春を迎える
 
前髪が風に吹かれてやり直す無限ループの青いえすえふ
 
タワレコの黄色タワレコの赤色音楽で食むフランクフルト
 
ドライヤー中なら何を言ったとて聞こえないから「終わりにしよう」
 
カミサマも誰かを好きになり歌う嫌いな誰かを呪うように
 
落ちている手袋を踏んでしまった私を見てる信号黄色

短歌 2022年12月

駅前の君に会うためのペルソナかわいい貴方が私を作る
 
季節柄あたたか〜いが恋しくてボタンを押して神を取り出す
 
海を飛ぶ鳥を眺める深海魚深々と燃える惑星に空
 
炬燵から腕を伸ばして向こう側まだ届かない沖にいる舟
 
鮫がいるごと鴨川を飛び越えるあ、喰われたさすがに寒いな
 
「ごめんね」が閉じ込められたオルゴール博物館に行けて良かった
 
心臓に手があるように窮屈でどうか明日は生きますように
 
天井に波と色とが交わって紫煙がくゆる様を見る蜘蛛
 
吐き出した煙のごとく街に出る愛がきらめく/殺して回る
 
階段を落ちた先には猫がいて落ちる前の人を見ている
 
白髪の風吹きすさび手を隠す狙い定めたように耳鳴り
 
轟音に凛として立ち咆哮す夏の少女の声のギターが
 
ぬめらりと話す男の顔にしみ沼地から来た転校生だ
 
ふらふらと見えなくなるまでふれふれと声が聞こえるカプリコーンよ
 
カメラには写らなかったけれど 見た 軌跡を残すカプリコーンよ
 
初バイト 出かける荷物日々となり行ってきますと君に朝が降る
 
透明なフラッシュバック眩しくてペットボトルに花をそそいだ
 
あ、もしもし火星ですか?デリバリーお願いしたいんですが、海の
 
砂漠にも爆音で鳴る君がいてほしい乾いた朝が求める
 
夜に見た知らぬ映画のサントラが踊る死体を乗せたドライブ

「ぼっち・ざ・ろっく!」とアジカン、大好きです。ありがとう

 久しぶりに、本当に久しぶりに日記としてのブログを更新しようと思う。理由はアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」があまりに自分に刺さる内容で、最後の最後には泣いてしまったから。
 「ぼっち・ざ・ろっく!」が私にとって本当に特別な作品になった。どうしてここまで特別に感じたのか、その要因が一つ見えたので、そのことを書こうと思う。
 一行で言うと「アジカン大好きだから」です。よろしくお願いします。
 
 まず前提として、「ぼっち・ざ・ろっく!」はASIAN KUNG-FU GENERATION(以下アジカン)が元ネタになっていることが大量にある。主人公後藤ひとりをはじめとするバンドメンバーの名字は全員アジカンのメンバーと一緒だし、今回のアニメの各回サブタイトルは全てアジカンの曲名が元ネタだ。
 そして私はこのアジカンのことが好き。
 そんな大きな声で言えるほどではない。全部のアルバムをちゃんと聴いてたわけではないし、さっきのサブタイトルの元ネタも全て知っていたわけではない。
 でも小学生の時に人生で初めて自分の意志で手に入れたCDはアジカンの「ワールドワールドワールド」で、何度も何度も聴いた。ちなみにこのアルバムを買った理由は当時放送してたBLEACHの主題歌「アフターダーク」の入ってるCDが欲しかったから。シングル買おうとしたら兄が「アルバムの方がたくさん曲あってお得やで」と言ってくれてこのアルバムに出会った。当時はこの「ワールドワールドワールド」と、くるりの「ベストオブくるり」と相対性理論の「シフォン主義」をずっと聴いていた。
 「ワールドワールドワールド」の構成が本当に大好きで、2曲目に「アフターダーク」が来て、次の「旅立つ君へ」から「ネオテニー」がシームレスにつながっていくのに驚く。途中「No.9」の「ミスター・パトリオット」という言葉はかなり耳に残ったし、「惑星」とかも好き。鉄コン筋クリートの主題歌だった「ある街の群青」が最高で、最後に「新しい世界」では大きな声を出して「世界!」と言うのはたまらなかった。
 そんな中10曲目に「転がる岩、君に朝が降る」がある。正直当時は歌詞についてそれほど意識が向いていなかった。雰囲気が大好きな曲で、なんとなく静かな空気を感じて好きだった。
 それでも「ワールドワールドワールド」自体が何度も何度も聴いていたアルバムなので「ぼっち・ざ・ろっく!」の第1話「転がるぼっち」、第12話「君に朝が降る」というタイトルを見た時はたまらなく嬉しかった。
 そして、その第12話「君に朝が降る」で作中バンドの結束バンドによる「転がる岩、君に朝が降る」のカバーが流れた。その歌詞の一番を引用する
 
出来れば世界を僕は塗り変えたい
戦争をなくすような大逸れたことじゃない
だけどちょっとそれもあるよな
俳優や映画スターにはなれない
それどころか
君の前でさえも上手に笑えない
そんな僕に術はないよな
 
 まず「ぼっち・ざ・ろっく!」の側面から見て、あまりに主人公後藤ひとりにぴったりな歌詞だと思った。彼女の不器用さとか野望がこんなにも重なり合って共鳴していて、爆発していると思った。
 そして私個人にとってもその大切さがさらに深まることになった。多くの人がそうかはわからないけれど、私は今でも心のどこかで「世界を塗り変えたい」と思っていることは否定できないし、一方で「俳優や映画スターにはなれない」こともとっくに知っている。下手したら「君の前でさえも上手に笑えない」状態かもしれない。この感情にぴったりと寄り添ってくれる歌に、私はとっくの昔に出会っていたんだということを教えてくれた。
 私にとって大切な曲のその本当に大事な部分を見ることができていなかったけれど、そのことに気が付かせてくれた。こんなに嬉しいことはない。
 もし「ぼっち・ざ・ろっく!」がアジカンのことを安直にカバーしたいなら「リライト」とか選ぶと思う。死ぬほど名曲だし全員知っているから。でも本当に結束バンドがやるならってなったら「転がる岩、君に朝が降る」が本当にぴったりだし、これを選んだってことはめちゃくちゃ聞き込んだんだろうなって思えて、アジカンと「ぼっち・ざ・ろっく!」への愛情深さとかが見えてきて、めちゃくちゃ嬉しくなった(なんか上から言っているみたいで申し訳ありません)。
 「リライト」だったら最高の作品だったけど、「転がる岩、君に朝が降る」だったので特別な作品になった。
 
 アジカンが僕にとって特別なバンドで良かった。「ぼっち・ざ・ろっく!」を見始めて良かった。人生に音楽があって良かった。そう思わせてくれるエンディングだった。
 
 「ワールドワールドワールド」聴いてみてください。アジカンに興味出た人は「ソルファ(2016)」聴いてみてください。
 そして「ぼっち・ざ・ろっく!」最高でした。ありがとうございました。

短歌 2022年11月

窓外を走る車の音を聞く此処を離れる冬服の箱
 
あの車僕を轢こうと思うかもシャンプー切れて買わなきゃだった
 
もしエビが四本足で歩いたら殻を剥くのもためらうだろうか
 
遅くても今すぐ走れあと7周先で止まらぬ君の憧れ
 
前を行く人の切る風身に纏う君も風切り粒子を纏う
 
声に出す「悲喜交々」は3:7で喜びじゃない?でも泣きそうだ
 
〈とまります〉微かに灯る電光に指を近づけ生活をする
 
踏切を渡ればきっと次の街跳んで渡れば次の次まで
 
窓外のネオンで君も赤と青怒って泣いてパープルのピザ
 
包丁に名前を付けて呼んでみる鷄は切れずに未練がましい
 
ビルの中シェイクされてるエレベータ声が詰まって最後に沈む
 
昇降機上昇による変身か位置エネルギー爆発事変
 
山吹の下弦の月と見つめ合う無線機からはホワイトノイズ
 
雑音の中から拾う彼の声独りではない短波集会
 
電源を切るように寝る間違えて強制終了したから消えた
 
最初からセーブデータをやり直すこともできずにまた君に会う
 
ロードすることもできずに思い出は破損したままのmp4
 
夕焼けに手足をつけて走りだす私の声が届く憧れ
 
ニュートンが発見したから紅葉は切り離されて逆らえず落つ
 
底のない穴に落ち葉が降ってきて永遠だって始まりがある
 
また君にさよなら告げる期待して今日の終わりを手放せずいる

短歌 2022年10月

洗顔で落ちる感覚幽霊が取り憑いててもさっぱりしてる
 
ノケモノもケモノもいてもOKどうせ誰もがニンゲンダモノ
 
この中に狼がいる疑いを向けあい生きる愚かさも食む
 
人間を愛する我に人間の要素DNAのパターン
 
幽霊に体重ねて夜を見ていくつか星を教えてみたい
 
追い風を捕まえて青 キミ色に駆け抜けていこっ私と一緒!
 
BACK TO THE PAST 当たり前のこと言った未来も平行線上
 
レモンティー入れたコップの涙腺にずけずけ入り泣いた手のひら
 
酔う前に目が合い酔ったふりで見て酔って見つめて「さびしい」と言う
 
暴力の支配が口に滲ませる台詞を研いでまた傷つけた
 
走馬灯全部何かのパロディであそことかあの映画のキスだ
 
地獄でも聞こえる歌があるという呻けども歌叫べども歌
 
死神が火を点けたがる導火線長い分だけ生きたがるから
 
いくつかの平行世界見た上で今を選んでバス停で待つ
 
2人組きっとどこかで交わると言われているがほぼ平行線
 
がたんごとん揺られて君に近づいてカランコロンと街にかけ寄る
 
古本の匂いで君に誘われて今年の秋に栞を挟む
 
一人でも一輪でもいい何もある部屋の中から助けを求む
 
重なった無限の音がこぼれてく不協和音を救いあげてる
 
裏表紙書かれた「田中」蛍光の単語の意味を届けたく読む
 
軽やかで重い一歩を踏み出して水中。そして大きく息を
 
粘菌のように広がるアスファルト歴史を吸って夜にきらめく
 
「しにたい」に2本足したら「もにたい」でとてももにたいああもうねたい
 
白布のゴーストになり出没す孤独と呼ばれ目を逸らされる

短歌 2022年9月

理性ダム決壊させて溢れ出る昔誰かを好きだったこと
 
宙に浮くラスボスごとく手を広げ寝ている夢の世界の勇者
 
体操着書いた名前が泥まみれ大人になって触れたからかい
 
満足のできない水を飲まされて渇き続ける欲張りの夜
 
一本で満足できる塊をたくさん売って満足できない
 
鏡越し映る自分に問いかけるお前は誰でどこに生きたい?
 
終わらない緋色の研究独りでは飛べない鳥も居るのだろうか
 
埋め立てはマンションになり斜向かいは更地になってコンビニが建つ
 
あなたなら走り出しても止まらない駆け抜けて空・風・今の青
 
最高の瞬間駆ける輝きがいつまでも続くChapter1だ
 
森を消す人と人とが恨むよう電柱に集う夜中のカラス
 
溢れ出る本の石油に溺れつつ知恵の泉を清掃してる
 
檸檬ファイトクラブも爆弾も作れないから虫を殺した
 
あだ名より名字で呼んでいる方が特別になるかもと思って
 
普段なら買わない本に散財し知恵を得るのが「私の乱」よ
 
それでも地球は回り日が昇ることは全く救いにならない
 
真夜中のアニメの合間Blu-rayBoxを売るキャラクター達
 
お日様が撫でる産声に水をやる花になったらまた教えてね
 
羽のない扇風機見てマジシャンのように手を入れたいのも大人
 
天井に映る水面のゆらめきに決して映らぬメダカの泳ぎ
 
電車に揺られる自分は本当にゴールに近づいているといえる?
 
玄関を閉めたか確認するように傷つけた人を思い出してる
 
勝負して負けたらどんなことも聞くと言っていつも勝ってくれたね
 
幸せは歩いてこないさあ走って!その間だけ応えられます