クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

短歌 2022年10月

洗顔で落ちる感覚幽霊が取り憑いててもさっぱりしてる
 
ノケモノもケモノもいてもOKどうせ誰もがニンゲンダモノ
 
この中に狼がいる疑いを向けあい生きる愚かさも食む
 
人間を愛する我に人間の要素DNAのパターン
 
幽霊に体重ねて夜を見ていくつか星を教えてみたい
 
追い風を捕まえて青 キミ色に駆け抜けていこっ私と一緒!
 
BACK TO THE PAST 当たり前のこと言った未来も平行線上
 
レモンティー入れたコップの涙腺にずけずけ入り泣いた手のひら
 
酔う前に目が合い酔ったふりで見て酔って見つめて「さびしい」と言う
 
暴力の支配が口に滲ませる台詞を研いでまた傷つけた
 
走馬灯全部何かのパロディであそことかあの映画のキスだ
 
地獄でも聞こえる歌があるという呻けども歌叫べども歌
 
死神が火を点けたがる導火線長い分だけ生きたがるから
 
いくつかの平行世界見た上で今を選んでバス停で待つ
 
2人組きっとどこかで交わると言われているがほぼ平行線
 
がたんごとん揺られて君に近づいてカランコロンと街にかけ寄る
 
古本の匂いで君に誘われて今年の秋に栞を挟む
 
一人でも一輪でもいい何もある部屋の中から助けを求む
 
重なった無限の音がこぼれてく不協和音を救いあげてる
 
裏表紙書かれた「田中」蛍光の単語の意味を届けたく読む
 
軽やかで重い一歩を踏み出して水中。そして大きく息を
 
粘菌のように広がるアスファルト歴史を吸って夜にきらめく
 
「しにたい」に2本足したら「もにたい」でとてももにたいああもうねたい
 
白布のゴーストになり出没す孤独と呼ばれ目を逸らされる