クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

短歌 2022年11月

窓外を走る車の音を聞く此処を離れる冬服の箱
 
あの車僕を轢こうと思うかもシャンプー切れて買わなきゃだった
 
もしエビが四本足で歩いたら殻を剥くのもためらうだろうか
 
遅くても今すぐ走れあと7周先で止まらぬ君の憧れ
 
前を行く人の切る風身に纏う君も風切り粒子を纏う
 
声に出す「悲喜交々」は3:7で喜びじゃない?でも泣きそうだ
 
〈とまります〉微かに灯る電光に指を近づけ生活をする
 
踏切を渡ればきっと次の街跳んで渡れば次の次まで
 
窓外のネオンで君も赤と青怒って泣いてパープルのピザ
 
包丁に名前を付けて呼んでみる鷄は切れずに未練がましい
 
ビルの中シェイクされてるエレベータ声が詰まって最後に沈む
 
昇降機上昇による変身か位置エネルギー爆発事変
 
山吹の下弦の月と見つめ合う無線機からはホワイトノイズ
 
雑音の中から拾う彼の声独りではない短波集会
 
電源を切るように寝る間違えて強制終了したから消えた
 
最初からセーブデータをやり直すこともできずにまた君に会う
 
ロードすることもできずに思い出は破損したままのmp4
 
夕焼けに手足をつけて走りだす私の声が届く憧れ
 
ニュートンが発見したから紅葉は切り離されて逆らえず落つ
 
底のない穴に落ち葉が降ってきて永遠だって始まりがある
 
また君にさよなら告げる期待して今日の終わりを手放せずいる