クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

短歌 2022年12月

駅前の君に会うためのペルソナかわいい貴方が私を作る
 
季節柄あたたか〜いが恋しくてボタンを押して神を取り出す
 
海を飛ぶ鳥を眺める深海魚深々と燃える惑星に空
 
炬燵から腕を伸ばして向こう側まだ届かない沖にいる舟
 
鮫がいるごと鴨川を飛び越えるあ、喰われたさすがに寒いな
 
「ごめんね」が閉じ込められたオルゴール博物館に行けて良かった
 
心臓に手があるように窮屈でどうか明日は生きますように
 
天井に波と色とが交わって紫煙がくゆる様を見る蜘蛛
 
吐き出した煙のごとく街に出る愛がきらめく/殺して回る
 
階段を落ちた先には猫がいて落ちる前の人を見ている
 
白髪の風吹きすさび手を隠す狙い定めたように耳鳴り
 
轟音に凛として立ち咆哮す夏の少女の声のギターが
 
ぬめらりと話す男の顔にしみ沼地から来た転校生だ
 
ふらふらと見えなくなるまでふれふれと声が聞こえるカプリコーンよ
 
カメラには写らなかったけれど 見た 軌跡を残すカプリコーンよ
 
初バイト 出かける荷物日々となり行ってきますと君に朝が降る
 
透明なフラッシュバック眩しくてペットボトルに花をそそいだ
 
あ、もしもし火星ですか?デリバリーお願いしたいんですが、海の
 
砂漠にも爆音で鳴る君がいてほしい乾いた朝が求める
 
夜に見た知らぬ映画のサントラが踊る死体を乗せたドライブ