クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

「ウィーアーリトルゾンビーズ」を見た話。誰かにも見てもらいたい話。

 先日見た映画「ウィーアーリトルゾンビーズ」に言葉にまとめられないけどいろんな人に見て欲しいと思えるものだったので、できる限り言葉にしたいと思います。

 

f:id:kujomiya:20190623213512j:plain

 

 4人の少年少女が両親を亡くし、火葬場で出会うところから話が始まります。彼らは誰も泣かないどころかあまり感情を出さない。ゾンビだから。

 彼らはさまよってゴミ捨て場にたどり着き、バンドを組むことにする。そのバンドがバズって社会現象になって、それから。。。

 

 上の文章では全然良さが伝えられてないんです。すみません。公式サイトみてください

映画『WE ARE LITTLE ZOMBIES』 | 全国公開中!

 

 まず何が言いたいかって、この映画が「成功が救済ではない」ことを描いてることなんです。バンドが成功したけど彼らの表情はずっと変わらないんですよ。これまでの過去が成功によって報われるわけではない。成功したからといって幸せになるとは限らないってことを突きつけられるんですよ。

 でもこの「成功が救済ではない」ということが、「成功しなくても良い」ということを教えてくれるんです。生きることを肯定できなくても、うまくいかなくても、それでも良いんだってこと。何があっても人生が続くことを見せてくれるんですよ。

 

 もう一つ言いたいことは、彼らが13歳の少年少女であることと、彼らの周りは「大人」であることです。

 世界が分からないほど「子ども」じゃないけど、うまく立ち回るような「大人」じゃない。「大人」は葬式で泣かないことを責めて、彼らのことを思ってるふりをして結局は自分のために生きている。

 そんな「大人」に彼らはクソだと言いながら子どものままでいるんですよ。

 彼らがクソだと言うことに「大人」はそれが「大人になる」ってことだとか言うかもしれないし、僕もそうかもしれない。でも彼らはそんな世界そのものに抗っている。子どもである今を生きているから。「大人」はクソだしずるいんですよ

 

 こうやって書いて思考がまとまってくるとこの映画が本当にとんでもない作品だと思い知らされます。書いたことの何十倍もの質量を直接ぶつけられて、見終わった後まともな思考ができない作品でした。たくさんの人に見て欲しい映画です。人によって喜怒哀楽は違うけど、感情が強烈に沸き起こる映画だと思います。

もうすぐ上映終了したり一日一回しかしてないところもあるけど、可能な限りとりあえず見て欲しい。誰かと何を感じたか話したい映画なので・・・

 

 

あと4人の中で恋愛関係が完全に否定されるの最高でしたね……

 

littlezombies.jp

8月31日追記

改めて見ると新たに気がつくことがたくさんあったのでそれを少し書きます

 

まずイクコがほとんどの場面で左手をポケットに入れてること。で、その左手を出して両手を使うシーンがヒカリの耳を塞ぐところ。あの場面の意味を深く考えられていないけれども、なんとなく世界との繋がりのあいまいさみたいなものを感じた

 

マネージャーが、バンド解散して物にあたりまくった後に見せる謝罪と半笑い。1回目は人間の怖さを感じたけど、彼は「大人」の中にいる生きづらい人なんだなと思った。ひどい大人達の中で描かれる彼は上司に責任転嫁される姿も描かれていて、全てがダメになった彼が感情を爆発させてゴミに当たり散らすのは、人間の脆さを見ているようで切ないね

 

見れば見るほど面白いのではこの作品。最後のアレとかほんとにね、ね、ね

最後のアレはずっと消化できなくて、どう捉えれば腑に落ちるのかまだ見つけられていない。のでまた見ようと思います

2019年ベストなのでは・・・?という気持ちにもなるこの作品が誰かに届きますように