クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

樋口円香LP 「嫌い」の意味について

 シャニマスシナリオ「ランディングポイント」樋口円香についての感想(樋口円香LP - クラゲドーナツ)は一度書いているが、今日改めてLPを見返して気になった部分が出てきた。前回のが全体に目を向けたものとすれば今回は小さな一点に目を向けた内容になる。
 
 「yoru ni」において川に落ちた樋口円香をシャニPが「勝手に」助ける場面。
 「……」に「嫌い」という声が入った後、「嫌い……」というセリフがある。この「……」の方の嫌いにはどういう意味が含まれているのか気になった。
 この少し前の場面では「……るさい」と言うセリフがある。だからここも「……らい」でいいんじゃないかと思うのだけれどそうされていない。
 音声だけのセリフというものをよく演出で入れてくるシャニマスだから、ここになんらかの意味を感じてしまう。
 はたしてどういう意味なのかと問いを立ててみるけれど、何かしら証拠を集めて論理的に組み立てるというのも難しいので、直感的に感じたことをまとめておこうと思う。
 
 この場面において登場人物はシャニPと樋口円香の2人だけ。直前にシャニPの思考が記述されていることからシャニP視点の話と考えることができる。3人称的だが、1人称で物語が進んでいるといえる。
 だから書かれない言葉はシャニPが聞き取っていないものとなるのではないか。シャニPは「……」の「嫌い」を聞き取っていない。テキストには現れないという表現がされている。
 一方で樋口円香の視点からも考えてみる。先の「……るさい」という言い方も合わせると、明確に伝えようとしている言葉はテキストに表れてくるのではないか。
 先ほどのシャニPが聞き取れることの裏返しになるが、シャニPに聞き取らせようとしている言葉はテキストで表れる。
 シャニPが聞き取れなかった、あるいは樋口円香が聞き取らせようとしなかった言葉が「……」の「嫌い」。
 
 するとメタ的な視点になるが、なぜそのようなセリフがあるのかということが問題になる。2人の間で交わされないセリフをこちら側に提示している。
 樋口円香が聞き取らせようとしなかったという点が重要なのではないかと思う。意思を持って出した言葉ではなく、心の声としての役割を果たしているのではないか。
 上でも述べたようにこの場面はシャニPの視点で描かれている。だから思考、心の声はシャニPのものしか本来は見えない。
 樋口円香の心情は現れるものだけ、セリフや行動で判断するしかない。そのセリフ、行動は全てシャニPに見られているという制約がかかっている。人に見られていること、あるいはその人に伝えることを前提としたセリフ、行動になる。
 建前である可能性が強く残ることになる。
 しかしそれが自然と出た言葉として表現されれば、本音に近いものとして考えることができる。
 「……」の「嫌い」は最も本心に近しい言葉として捉えることができるんじゃないだろうか。ただしあくまで「近しい」だけで本心そのものではないと思う。
 当然最後の最後までシャニPに聞かれているということは樋口円香自身わかっているはず。あの場面は相当距離も近いことが想像されるし(やっぱりお姫様抱っこなんでしょうか。円香が手を痛めていることとシャニPが引き上げていることを考えると)声が届いてしまうという無意識が働いているので、最も本心に近い別の言葉としての「嫌い」なんだと思う。
 それがどういう意味なのかはさておき、相当大きな感情なのではないだろうか。普段感情をそれほど見せないからこそ、本当に大きなものを感じる場面だったと思う。
 
 以上が「……」の「嫌い」について考えたことだ。シャニマスはこういうセリフのない音声や、セリフと違う音声を流すことがあるので、どういう意図なのか考えてみると面白いかもしれない。【ピトス・エルピス】でもあったし、また考えてみたい。
 
余談
 【カラメル】も本当に良いものだった。ここまで築き上げた関係があるからこそコミュ1がめちゃくちゃ面白いものだったと思う。そしてコミュ2とtrueについてもすごく良い。またいつかまとめたいと思う。今はまだ中身のない感想しか書けないけれど、相当好きなコミュでした。