クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

短歌 2023年10月

あゝ遠くまで飛んで行け折鶴は君を宿して翼をひらく

 

熱を帯び身体が宙に浮いたから歌は響いて鳴り止まなくて

 

 

去年なんとなくで応募したNHK全国短歌俳句大会に今年も挑戦しようと思い、いろいろ確認していました。去年はあんまり存じ上げていなかった審査員の名前を見て慄いています。がんばりたいね

 

鑑賞記録

 

千種創一『砂丘律』

雪原で泣くんだろう泣きながらたばこ吸うんだろう僕は

 

何か行動をしながら、それを客観的に見ている自分がいる。時々その客観的視点は非常に冷ややかであると思う。

感情を大きく動かされることがあったとして、それを「泣くんだろう」と言われる。その上「泣きながらたばこ吸うんだろう」と行動まで予測される。雪原で泣くこと、泣きながらたばこを吸うことの感傷的な情景を、意図的に行おうとしているかのように「だろう」と言われる。泣くことも含めて全て演出された感情じゃないかと冷徹な視線を向けられている。その矛先は最後に「僕は」と付くことで自身へと向く。ただ最後に明かされるまで誰に向けられているかわからないのは、その矛先が自分以外、広く言えば抒情的に描こうとする表現そのものにも向いているからと考えるのはやりすぎだろうか。

音数は5・6・5・6(7)・6(5)(最後がまたがっているのをどう切るか判断できない)でかなり字足らずかと思う。このそれぞれ短いリズムが突き離すような物言いに聞こえるのではないか。下句を6(7)・6(5)としたが区切りとしては3・6・3で「たばこ」と「僕は」の3音。これが字足らずの短さからさらに短いリズム感を生んでいるのではないだろうか。

感情が描かれやすい短歌で必要以上に抒情的になることから距離を置くような視点を感じる作品だと思う。