クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

短歌 2022年7月

「会いたいよ」モノローグなら届かないメッセージボトルの中の船
 
「会いたいね」ダイアローグは沈み行く船ごとく消え魚の住処
 
iPhoneのライトを星に見せつけてこっちも輝く星だと教える
 
原液で流し込む酒に罪着せ自分は潔白のように見せたね
 
ハネがないから手を入れても大丈夫やってみなよ真実の口
 
イオンモールの大きさに耐えられずフードコートを食べてしまった
 
コピペした言葉の中で覚えてるものなんて所詮愛の言葉だ
 
報酬はその桃がいい手伝ったお礼にとその御手から授かる
 
君が好きという料理も文字に変えバラバラにしたあのチェーン店
 
「夜見るとレーザービームみたいだね」窓外にあるビルをなぞって
 
夜に鳴くカラスもきっと存在を証明したい星なき街に
 
真夜中に通る車のリズムですいつまでも続くしゃっくりの音
 
「一本でもニンジンだから一人でもニンゲンですね」寂しくないよ
 
手を洗い流れ落ちてく細菌に自由を与えることもできた
 
目の奥を流れゆく血の熱っぽさアラームはいくつ鳴らすタイプ?
 
仮面から見える言葉が本物で彼は裸のフリをしている
 
咳をして流れる空気を漂う国境なんてないものとする
 
変わらない部屋に中から振動を与え続けるスマホの光
 
吊るされた電球は震え続けてる目を瞑っても血が震えてる
 
長年のペーパーナイフの切れ味だからいっつもケンカにならない
 
あらかじめゴミ捨てに出る真夜中の階段に虫がいるかもしれぬ
 
「ソウカモネ」と言った時は飲み込んだ「ゾウカモネ」を割いて見たかった
 
飛行機と同じ音出すエアコンに羽をつけてものたうち回る
 
インナーが見せられる肌だとしたら秘密は秘密のまま触れてよ
 
「海、見える?」「うん、見えたよ」「一瞬だね」味付たまご頬張りながら