月光が内から照らす微笑みを隠しきれないあたしの仮面
葉を揺らす夏の日に触れ空へ向く放課後の君遠くなっても
今月も鑑賞を掲載します。難しいけど、発見もあって楽しい。
鑑賞記録
雪舟えま『たんぽるぽる』
目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港がすき
生活の零から肯定するようなはじまり。そして日常の喜びから非日常的な空間へ視点が移っていく。
「目がさめる」というのが「目を覚ます」とは違って自然と身体が起きたくなって起きるということとすれば、静かで自分(と同居人がいれば同居人)の出す小さな音しか聞こえない状態が想像できる。朝、陽の光が自然と入ってきて目が覚める休日のような、どことなく優雅な感覚がある。
そして「目がさめる」から朝の空港を想像する。例えばその土地から完全に人工物である空港の、つるつるとして引っかかりの少ない床や、高い天井、一面の窓。それらが朝の空気の中に存在している。
朝の空港を想像すると人が少なく、ざわめきの少ない場所として感じられる。私はあまり空港に行った経験はないが、記憶では早朝の空港は人がまばらで、どこか落ち着いた雰囲気のある場所だ。
とても大きな空間なので人が少ないとよりその存在が強調される。「目がさめる」と「空港」には朝を通じた緩やかなつながりがあるように思う。
「目がさめるだけでうれしい」と「人間がつくったものでは空港がすき」に時間的、空間的連続や文脈を理解し難いが、この緩やかなつながりがこの2つをしっかりと結びつけているのではないだろうか。