クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

短歌 2022年4月

春の花散り集い散りまた集い別れを告げて私と独り
 
風道を大名行列だと思う桜の花に斬りかかられる
 
そわそわと揺れる生徒は初めての開く扉にご注意ください
 
生きていく名もなき人が死んでいく名のある人が今日もどこかで
 
ラジオから過去が流れる未来だけ今とできずに待っている夜
 
今 空へ輝き重ね越えていく煌めく虹も含めて翼
 
花見より食べるのが好きと言う君私も君を見てるより好き
 
確率が20%でも傘持って家を出る人みたいなデート
 
雨風に曝された靴攫われた首から下の燃え盛る肌
 
鶏肉に火が通ったか気にしてる時間の分だけ優しくなれる
 
眠れない夜に聞いてた番組が始まる時間までシルエット
 
心から酔いにまかせてしまっても伝えられない海を捨てよう
 
寿司桶持って走るほど君のこと求めているよ崩れないでね
 
玄関でうわ虫だって轟かす外の世界に向けた喧伝
 
ポンペイの最後の夜に踊ってた彼女もきっとシンデレラけり
 
遠回りしたほうが良い定期券近道するとかわいくないし
 
火星にも日曜日ってあるらしい赤い砂漠と海見に行こうよ
 
今日だけは春の雨から雪が降る特別な日と刻んだカレー
 
いつまでも残り続ける春の雪次の僕まで彩ってくれ
 
降る止むを繰り返す雨神様も決めきれずにどちらにしようかな
 
思い出が欠落しても良いきっと駄目なパズルの方が好きでしょ?
 
ラジオから聞こえる海の夜は濃く喉に絡んで吐いたメロディー
 
微睡みに沈む液体に聞こえる春の陽気を笑い合う花