9月の終わりごろ1巻を買って、気がついたら既刊が全て家に揃っていたマンガ。そして先週の11月22日に最新刊を即購入し、嗚咽が出るほど泣いてしまったマンガ。「ブルーピリオド」の話です。
これといって趣味のなかった高校生、矢口八虎が一枚の絵と出会ったことで絵の魅力を知り、美大を目指していくというマンガです。
上の公式サイトリンクで2話まで読めます。これを踏んでもらえるよう書いた記事なのでよろしくな……
この1話目に魅力がギュッと詰まってまして、特に「文字じゃない絵という言語で、自分の思いが伝わる喜び」というのがめちゃくちゃに良いんです。
八虎は早朝の渋谷をなんとなく良いと思ったけれど、それを言葉にしても友達にうまく伝わらなかった。
早朝の渋谷ってさ なんかいいよな
は? ゴミくさくね?
言葉では難しい。それは3年生の森先輩にも対してもそうだった。けれど彼女は「あなたが青く見えるなら りんごもうさぎの体も青くていいんだよ」と言う。八虎はそれを聞いて自分の好きな早朝の渋谷を絵にする。何も知識がなくて失敗もした絵。描いたことを後悔した。その時、友達が早朝だと気がついてくれるんです。言葉で伝わらなかったその良さが、絵にして初めて共感されて、認められるんです。
絵は文字じゃない言語で、言葉を超えて伝わる力が本当に素晴らしい。その言葉を超える時がこの作品では何度も描かれていて、その魅力がほんとにほんとにほんとにほんとに良いんです。
この作品の魅力はそこだけじゃなくて、この言葉を超える瞬間のために巧みに言葉を使っているところにあると思うんです。八虎の思いや考えていることがたくさん言葉になって、それが絵と混ぜ合わさっていくことでより深く伝わってくるんです。例えば上の早朝の渋谷を描く時の彼はその景色に考えを巡らせます。
眠い空気の中の 少し眩しいような でも静かで渋谷じゃないみたいな 1日の始まりのような これから眠りにつくような 青い世界
モノクロのマンガであってもその青さが伝わってくるんです。八虎にはどう見えていたのかが伝わってくるんです。
しかも絵画だけじゃなくてこの作品そのものも言葉と絵がうまく混ぜ合わされています。登場人物の感情や言葉と、描かれる1コマが強烈に結びつくことで、その感情が何倍にも膨れ上がって自分の中に深く深く入り込んで刺さってくるんです。
嬉しい、悲しい、悔しい。あらゆる感情を言葉と絵でぶつけてくる作品。それが「ブルーピリオド」です。
公式サイトで試し読みできるのでね……お願いしますね……
※以下最新第6巻のネタバレありのちょっとした感想です。
嗚咽が出るほど泣いてしまったのは最後の最後です。あまりのことで最終回かと思いました。これからも続く、ありがとう。ありがとう……
1巻とめちゃくちゃ気持ちいい対比構造ですよね。八虎と森先輩。(1巻で森先輩がいなかった時のように)森先輩が八虎のいなかったその時に「素敵ですねこの絵」って言う。
ここと世田介くんに考えてたことが伝わるところも合わせて言いますけども、この6巻のとんでもないところは、八虎が今まで尊敬してきた人、目指してきた高い壁に、自分の考えが絵を通して伝わったこと、認めてもらえたことです。八虎が、自分より圧倒的に上手いと思っている世田介くんに「ちょっと見ない間に上手くなりやがって」って認められる。そして森先輩にも。渋谷の早朝と同じで伝えたいと思ったことがそのまま伝わったのが、八虎良かったね……