クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

『読書力』

 齋藤孝『読書力』を読み終わった。なかなか背筋の伸びる思いのする内容だった。
 かねてより自分の中に「読書力」が不足していることがコンプレックスであり、またスティーブン・キング『書くことについて』を読んで以来大量に読み、大量に書くことを目標としているという理由から、自分に足りない読書とは何かという疑問が湧いていた。
 ちょうど岩波新書フェアで紹介されていたこの本に目が止まり、めぐり合わせに感謝した。
 この本でいうところの「精神の緊張を伴う読書」というものが未だ足りないのではないかと感じる。そしてそういった本を4年間を目安に文庫100冊、新書50冊読む必要がある。
 恥ずかしいことに若干足りていないだろうと思う(若干というのも見栄が含まれている気がしてならない)。
 他にも要旨と自分が気に入った部分に線を引くなど、当たり前に言われていることを抵抗がありできていなかったりと、本当に読んでいて著者に軽いお叱りを受けているような気分になった。
 読書はやはり良いというだけでなく、誰もが当たり前のようにやらなければならない行為だという考えにも身が引き締まる。
 こういう本は定期的に摂取して省みていきたい。
 さて、この本の中で引用することの有効性について書かれていたので、読み返しながら目に止まった部分を引用してみようと思う。
 
 自分の中に微かにでも共通した経験があれば、想像力の力を借りて、より大きな経験世界へ自分を潜らせることができる。自分の狭い世界に閉じこもって意固地になったり、自分の不幸に心をすべて奪われたりする、そうした狭さを打ち砕く強さを読書は持っている。
 
 自分はなかなか思考が内向きになることが多いので、客観的な視点を手に入れておかなければすぐに世界を閉じてしまう。そうしたものを読書が打ち破るという事実を再確認させてくれたという意味で心強い文章だと思う。
 自分の興味が薄い分野やこれまで触れていない世界にまで目を向けるにはどうすればいいのか。そういう指針になるというか、暗闇の中光る灯台のような居場所を確認することができる本だった。
 作者のおすすめ本100冊も載っているのでここから始めていくのもいいかもしれない。