クラゲドーナツ

クラゲドーナツは虚無の味

夜歩き

 今日は音楽を聞きながら小躍りして帰った。良いことがあったわけではない。どちらかというとハードめな一日だった。そういう時にこそ音楽が効く。
 好きな曲だけ詰め込んだプレイリストを適当に再生して、歩きながら意識を音楽に傾けるとめちゃくちゃ気持ちよくなってくる。
 ちょっとリズムに乗ったりなんかして何もかも忘れて歩く。たまにはこういう日があってもいい。
 それにしても寒くなってきた。最近着る服に困る。
 完全な冬服を着るにはまだ早いと思っているので、秋服の延長上で闘っている。もうそろそろ負けてもいいのかもしれない。
 若干寒いと思いながらもうきうき気分で音楽を聞きながら帰っていたら昼を菓子パン一個で済ましたからさすがにお腹が空いてしまい、光に吸い寄せられる虫のようにコンビニに入ってしまった。
 最近ゴミ箱が少ないので、帰り道で食べてもゴミが少ない、持ち運びやすいものはないものかと眺めていた。するとレジ横で肉まんを売っているのを見つけた。
 今年初めてのコンビニ肉まん。もしかすると2年ぶりぐらいかもしれないと思いながら注文する。
 捨てるのに困らないようにとレジ袋を付けてもらったがこれは必要なかったかもしれない。というのも肉まんの包み紙だけではからしを付けたあと汚れてしまうかもしれないと考えていたのだが、からしが付いていなかった。
 店員さんにからし要りますかと聞かれたのは幻聴だったのかもしれない。もしくはからし要りますか、がレジ袋要りますか、という質問で上書きされたのかもしれない。要りますかプログラムの上書き。
 ともかく肉まんは無事手に入ったので良い。外に出て袋を開けて真っ白な肉まんを頬張る。
 久しぶりに夜の町で食べる肉まんは温かく美味しかった。
 こういう小さい喜びのために人間は生きているのよとか言い出しかねない類の美味しさ。
 音楽を聞きながら肉まんを食べ歩く。行儀の悪さも相まって非常に楽しい気持ちになった。
 普段行儀が良いかはさておき、たまにこういう悪さをするのはいい。
 こういう悪いことするために生きているのよ。